はじめに:Excelと紙の限界に気づいた日
「その修理って、前回どうやって対応したんだっけ?」 ある日の現場で、そんな問いかけに誰も即答できなかった瞬間、私はゾッとした。
設備管理はExcelで行っていた。修理履歴も点検記録も、ベテランが個別に持っているファイルや紙でなんとかなっていた……と思っていた。しかしそれは、情報が“人にしかない”状態だったのだ。
- 修理履歴が見つからない
- 点検記録が埋もれる
- 予備品の場所が分からない
属人化が進み、記録は個人の手元に散在し、緊急時にこそ“情報が役に立たない”という致命的な問題を抱えていた。
導入のきっかけ:小さな危機感が現場を動かした
記録が紙やExcelに留まり、情報の一元管理ができていないことに気づいた私たちは、「まずは1台、1件からでも始めよう」とクラウド型の設備管理システム『MENTENA』のトライアルを決意した。
- 2024年5月:1か月間のトライアル開始
- 2024年7月:正式導入決定
当初は「また仕事が増えるのか」という懸念もあったが、スマホで写真付きの修理履歴を残せる体験が現場の意識を変えていった。「これは便利」「これなら使えるかも」という声が少しずつ増えていったのだ。
現場に根づかせる鍵は「ルール」と「納得感」
MENTENAは“導入すれば終わり”のツールではない。むしろ、
- 誰がいつ何を登録するのか
- 写真の撮り方や命名のルール
- 承認の流れや担当者の明確化
といった“運用ルール”を現場とともに整備することで、ようやく機能する。
また、現場の意見も積極的に吸い上げ、実際の使いやすさを考慮しながら調整した。「使わされている」ではなく「自分たちで作っている」という感覚が、定着の鍵になった。
修理履歴・点検・予備品管理が“見える化”された
本格運用が始まると、MENTENAの機能が次々と現場を変えていった。
- 修理履歴:写真付きで残すことで、トラブルの再発防止・原因分析が容易に。
- 点検記録:スケジュールと紐づけて自動アラート。漏れが激減。
- 予備品管理:設備ごとに紐づけ、在庫数・保管場所・納期まで見える化。
- 設備台帳:登録が進むにつれて、図面・取説なども一元管理。
「探す時間」が「使う時間」に変わり、“情報を活用する”フェーズに入った感覚があった。
習慣が変わり、文化が生まれた
最初は「面倒くさい」と敬遠されていた記録も、今では自然と現場全員が残すようになった。
- 修理履歴記録率:50% → 95%に向上
- 記録は“報告のため”ではなく“未来の自分と誰かのため”に変わった
教育時間も減った。新人が「どこに何があるか」「過去にどう対応したか」を自分で調べ、先輩の時間を奪わずに成長していく。属人化の解消が、自然と技術伝承につながるのだと実感している。
おわりに:記録は未来の誰かを助ける
DXは大げさな改革ではなく、小さな「やってみよう」から始まる。
Excelや紙で管理していた頃には想像もできなかった、“誰でも使える仕組み”が今では現場に根づきつつある。MENTENAはあくまで手段であり、本質は「記録し、共有し、活用する文化」を作ることだ。
記録は未来の誰かを助ける。
この意識が現場に根づけば、DXは成功だと思う。
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